みたび 皐月のこと      


1日(土)電車に乗っていて、多摩川の鉄橋を渡るとき、毎回違った風景が見られて、とても楽しい。
 冬の間くっきりとみえていた富士山はもう霞の中に姿を消して、遅まきながら春の靄が柔らかく水面をなでている。
 昨日は水辺のテントから数人のホームレスの人たちが出て、釣り糸を垂れているのが絵になっていた(なんでホームレスと思ったかと言うと、すぐ後ろにテントが並んでいて、その数と釣り人が同じだったから)。
こういう生活もいいだろうな、とふっと思う。
 今日は河川敷が草野球の人でいっぱい。
 だんだんと気候が定まってきたようで、人の気持ちも外に向いてきたのだろう。
 連休初日のローカル電車はがらがら。
 多摩川駅は緑に包まれていて、一瞬降りたい衝動に駆られたけれど、ちょっと躊躇しているうちにあっという間に電車が動いてしまった。
 今年のゴールデンウイークは海外旅行に出る人が多いと、ニュースで報じていたので、今日あたり空港はラッシュだろうな。
 でも今までに散々旅を楽しんだ私は、もう家の周りをうろうろするだけで、十分満足。
 5月1日というのは、母の誕生日で、祖母の祥月命日でもある。
 母の生前、メーデーなんかに生まれるから、お母さんは一生働き者なのよ、とからかっていたけれど、近年メーデーは労働者の祭典としてニュースにも上らなくなってしまった。
 今日は無性にお刺身が食べたくなって、駅を降りてスーパーで買ったマグロと、大急ぎで解凍して作った酢飯でお昼に食べた。
 これだけで幸せになれるなんて、我ながら安直な人間だわ。
 先月の家計簿(生まれて初めてつけ始めた大雑把な家計簿だけれど、これは今後の方針を立てるために必要と思って始めたら、意外と続いている)の整理をしたら、遊んだお金と、交際費が大幅アップしているのにびっくりした。
 もっともその中には、11月までの2つのコンサート代、バスツアー代、3回の食事会などが含まれているから仕方ないか。
 とにかくストレスを溜めないことを心がけて、元気でいなきゃ。
 夜10時半、娘が梅大福を1個差し入れてくれた。この間、大福が食べたいと言っていたのを、覚えてくれていたのかな?
 それにしても表と裏に大きく「20%引き」と張ってあって笑っちゃった。でも、忘れずに持ってきてくれた気持ちだけでも十分嬉しい。

2日(日)ゴールデンウイークの2日目。気持ちの良い風の渡る過ごしやすい晴天となった。
 アツコさんと都心へ買い物に出かける。ほんとうの目的は神楽坂。
 この間レイコさんのお母様のためにお線香を買った時に、去年2月にお母様が亡くなったユキコさんのために、お悔やみをしていないのが手落ちだったと気がついて、皆様で遅まきながらの弔意を表わそうということになったのだ。
 神楽坂にとても素敵なお線香屋さんがあるのを、以前見つけていたので、そこに行こうと思っていたのだけれど、なにせ連休の2日目で、こんな午前中に混んだ電車に乗るのは嫌。
 ましてや地下鉄に延々と潜るのはもっと勿体ないことで、そうなるとどんなに時間がかかっても、大好きなバスに乗りたいのは、当然のこと。
 学大から五反田までバスで行って、そこからは仕方なく都営地下鉄浅草線に乗って、大門で乗り換えて、牛込までと思っていたけれど乗っているうちに気が変わって、そのまま浅草まで行ってしまった。
 ひょっとしたら神楽坂は日曜日で店が閉まっているかも、と思ったのだった。
 浅草は今までに体験したことがないくらいの人出で、やっとのことで浅草寺にたどりついて、お詣りはしたものの、お線香屋さんが見つけられない。
 結局また銀座に逆戻りして鳩居堂という、いつものパターンになってしまった。
 今日は少々歩き過ぎで、帰ってからビッコとなった。まったくちょっと油断するとすぐにしっぺ返し食らうから、油断できない。

3日(月)サンデー毎日の私、朝起きて、え〜と今日は何曜日だけっけ、としばし考える。
 そうだ!月曜日だ、ゴールデンウイークでも休まずに来るゴミ収集車に敬意を表さねば、と慌てて起きる。
 実は先週の木曜日に、起きたら9時半という記録を作ってしまい、寝過ぎてボンヤリとしていてゴミを出しそこなってしまったのだった。
 このごろうっかりすると寝坊してしまい、朝雨戸をあけるのが恥ずかしい。
 今日はデイホームに行く日だけれど、昨日の歩き過ぎで夜になって足が痛かったので、早起きしてお風呂で温めようと決めていたのだ。
 だから6時半に目覚ましを掛けておいて、目が覚めてすぐに起きた自分を、えらい、えらい、と褒めてあげる。
 最近は足の痛みに上手に対処できるようになったな、と思う。
 お友達大好きな性格は、故障中の膝も生来の神経痛も、みんなお友達。
 連休の3日目で、テレビは幹線道路の渋滞を映している。この光景が大好き。
 家に籠もって、難渋している移動をウッシッシ、とみている性格のわる〜いおばさんなのだ。

4日(火)すこしばかり親しい仲で、とても潔癖症の方がある。
 最近この方は世の中すべてに怒り心頭なのだ。
 私だって、決して今のニッポンに安閑としているわけではないけれど、その熱情型よりは冷めているので、ほうほうと相槌はうつものの、聞いていて少々疲れる。
 でもそんな中で、その方のご家族の中でお祝い事が重なって、それに関しては欣喜雀躍、随喜の涙を滂沱と流していられる。
 その線までは私もいっしょになってお祝いの気持ちを惜しまないけれど、どうやら、最近それが正当化というか、当たり前のことになって、そうなると、他人の家庭のことがとても気になるらしいのだ。
 わが家では夫婦ともに、世間のお付き合いに関しては惜しみなく出来る限りの敬意を表してきたつもりだけれど、人様の家庭のことについては、一切干渉しない主義をとって、それがうまく世渡りをする知恵と思ってきた。
 だからわが家のことについて、口をはさまれたり批判めいたことを言われるのが、いささか辛い。
 どこの家だって完璧なものはあるわけがない。今私はこれについて、どう気持ちを処理しようかと考えあぐねている。
 それにつけても思うのが、私の大切にしてきた「とどの会」、「ユトリーバ」のふたつのこと。
 どちらも長いほうが35年、短いので8年の仲だけれど、お互いに節度を守っていて、とてもよい関係が続いている。
 連休の終わりで、延々と繋がっている道路の車の列を見ながら、どこへも行かず平常通りの一日を送っていると、余分なことが気になってくる、例年通りのゴールデンウイークでござんした。

5日(水)連休もあっという間に終わってしまった…と言っても、サンデー毎日の私としては余り関係がない。
 でも、明日からまた仕事に追われる子供たちのことを考えると、なんだか胸のいたむ思いになる。
 今日は子どもの日だし、そうだ、今夜は御苦労さま会をやろうと、思い立った。
 ことの序でと言っては語弊があるけれど、我がご分家もご招待することにした。
 でも現れたのはヨーコおばちゃんだけ。
 ミノ旦那はさっさとどこかに遊びに行ってしまったらしい。
 それでも私にとっては楽しい、たのしい夕べとなる。
 今日は朝のうちの2時間ほど、植木屋さんが桃の枝を落としに来たので、この間から考えながら実行に移していなかったモッコウばらの鉢を地植えにしてもらい、ついでに消毒もして行ってもらった。
 午後は久しぶりにレイコさんとピアノデュオで遊ぶ。2人とも病人を抱えていてなかなか時間がなく、1年ぶりで満喫したけれど、お互いに下手になったわねえ、と慨嘆しきり。

6日(木)昨日まで影も形もなかった玄関先の三寸アヤメが開いた。
 いつになったら開くのかしら?と思ったのがつい3日前だったのに、なんの前触れもなくと言った感じで、背筋を伸ばしてすいっと立ったその姿は、毅然とした気品を漂わせていた。
 3か月ぐらいカットをさぼってしまった髪みたいに、勝手かってに伸びている葉叢を分けてみたら、ある、ある、少なくとも20本ぐらいの蕾が待機中だった。
 もう20年以上前に、二子玉川のカズコさんのお玄関先から、2、3本頂いてきたこの花の生命力は強靭で、毎年増えすぎた葉を半分くらいに引っこ抜いても、負けずにその数をふやしているのだ。
 この花の時期になると、あの時の情景が脳裏をよぎって、お互いにあれから沢山の歴史を積み上げてきたことに感慨が湧き上がってくる。
 今はお互いに独り暮らしになってしまい、やがて「そして誰もいなくなった」という現実が来るのだわ。
 ま、いいか。
 お昼にプールであがり際にすれ違ったエイコさんが、この間少しばかり差し上げた山椒の佃煮を絶賛してくださったので、そうだ、もう1回ぐらいは作れそう、と思い立って、ざるを持って摘み取りに出た。
 成長して固くなってしまった葉も、茎を取り除けば、まだまだいける。
 でもなんだか溜まっていた疲れが吐き出された感じで、昨日から体調があまり好調でない。
 ひとつづつ葉をむしっていたら、肩が凝ってしまい、今日は早寝をすることにする。
 旦那が夢に出てきた。一人でご飯を食べるのはかわいそうと思って、付き合おうとしたけれど、パンが見つからなくて、引き出しをひっくり返して探していたら、西の空に銀色にきらきらと光る満月が出てきた。
 往診の先生がいらしたけれど、月灯りに照らされたベッドの周りが、私の脱ぎ捨てた洋服とゴミだらけ、という支離滅裂なものだった。
 これってなに?物語にもなりゃしないわ。どうやら私は“お疲れ”。

7日(金)このところ数年、わが家の周りにオレンジ色の小さなポピーがみられる。
 この花を最初に見たのは、東横線の線路の中だった。数年前にこのあたりの線路際に花を植えている2人の高校生のことが、新聞に載っていたので、彼と彼女が植えたのがきっかけだったのかも知れない。
 なんとかしてうちの庭に、と思っているけれど、いくら野生化しているとはいえ、よそのお宅のを抜くわけにもいかず、種が飛んで来るのを辛抱強く待っている。
 踏切から50センチ横にはいればごっそりと株を取れるけれど、怒られるかも、思うと勇気がない。
 それにしても花は沢山の情感を人に与えてくれるものだ。
 花はかたりべ。わたしのすべてを見通している様な……。
 今日はどうしたことか極度の疲労感。昨日に続いて今日もプールに行くつもりだったけれど、流石に自信がなく取りやめた。
 食欲が全くないのはどうしたのかしら?と考えて思い出したのが、3日前に肋間神経痛が起きて飲んだ痛み止めのこと。
 午後2時間ほどか〜か〜と寝てしまい、やっとのことで整骨院に出向いた。体調を話したら、今日はリラクゼーションのマッサージをしてあげると、臨機応変の対応。
 神経痛が起きたら、痛み止めを飲まずに、栄養ドリンクを飲んで、カイロで温めて深呼吸をするようにと、指示を頂いて、帰り道に深呼吸をしながら歩いて帰ったら、途中で過呼吸になりかけた。
 なにごともほどほどにしなきゃ。でもお陰で夜には元気を取り戻した。

8日(土)頑張って早起きして、隣の村民夫婦にくっついて世田谷観音の朝市に行く。朝5時40分なんて、いつもなら目が覚めてまたひと寝入りといった時間だけれど、家を出た途端にさわやかな朝風に体内時計が揺さぶられて、こんな気持ちの良い時間を今まで無駄にしていたかと、とても大きな損失を見逃していたことに気がついた。
 ほんとうは花を買いたかったのだけれど、無理やり目を覚まされて運ばれてきた花たちは、なんだかふてくされているような表情だったので、目的を変えて、とれたての大根、ほうれん草、しいたけ、それにこの前娘が買って来てくれたおこわが美味しかったので、思いつくままに買いあさった。
 午後めいっぱい昼寝。
 キョウコさんと夕方から別の区のコーラスに行く。
 これは今日が第1回の練習で、秋の芸術祭公演のために200人募集しているのを見つけて応募した。
この間から歌いたかったモーツアルトのレクイエムだったので。
 行ってみて驚いたのは、皆がとても綺麗な声で、初見が利くことだった。久しぶりに堪能する。
 でも正直な感想を言わせてもらえば、指揮者の指導力には少しばかり疑問が残った。あまり教え方が上手でないな。
 そう思ったけれど言葉にはしなかったら、帰りの電車の中で、キョウコさんが、「ねえ、あの指揮者、あんまり教え方上手でないとおもわな〜い?」「ま、いいか、モーツアルトが歌いたくて行ったんだもんねぇ」とお互いに納得する。
 こういう参加者は、指揮者にとってあまりお呼びでないかも。
 でもそんな大きな口はたたけない。今までずっとソプラノをやっていたのだけれど、最近の声の衰えは、世間様のご迷惑と自覚しての、アルトの初体験なのだ。
 学生時代から、一貫してソプラノのメロディを気持ちよ〜く歌ってきたけれど、アルトって大変!たくさんの名曲がこの縁の下の力持ち的存在によって支えられてきたことを、改めて認識した。
 それにしても最近の疲労感は、体に定着してしまったらしい。
 我ながらいくらでも寝られる。

9日(日)母の日なので、皆がご飯をご馳走してくれるという。
 食欲が回復してないので、家で寝ていたいというのが本心なのだけれど、折角の好意だから夜になって出掛けることにした。
 朝は苺を潰して、黒砂糖と牛乳で食べたら、少しその気が湧いて、黒米パンにチーズをのせてトースト。
 昼は昨日煮ておいた大根の輪切り2切れで、調整した。
 今日は一日中ぐだぐだと過ごして、体力の獲得のことだけ考えていた。
 夜7時木畑亭に行ったら満席で、2組のテーブルが母の日のお集まりと見た。
 今日は何が何でも、といった感じで、ためらわずに肉のコースを選ぶ。
 出掛ける前にノリコが買ってきてくれたリポビタンドリンクを飲んだのが効を奏して、帰りにはほぼ80%の体力が戻ってきて、ほっとする。
 もし、明日調子が悪かったら、病院に行こうと思っていたのだけれど、これなら大丈夫そう。
 旦那の病気以来、病院は一番きらいなところ。     
                           
                     

10日(月)すこし体調が戻ってきた。でもまだご飯がおいしくない。無理やり押し込んだ昼食を片づけて、デイホームに出掛けて行く。
 少々つらいけれど、それはそれで行ってしまうと1時間ばっちりとやってしまうのだ。
10分足らずの道で色々な花が咲いているのを見るのが楽しい。
 あるお宅で直径15センチもある見事な鉄扇(こういう字かしら?)がブルーと赤紫で燃えるように咲いていた。
 この花が大好きだけれど、何故か植えたことがない。
 通りすがりの花屋で、金魚草の束を見つけて買った。
 ピンクとクリーム色があったので、「混ぜたのはないの?」と聞いたら、おばさん、「ない!」ときっぱりと言う。この人はずっと以前に、何の花だか忘れたけれど、庭の花に添えようと思い、4本買おうとしたら「4本なんて縁起の悪い客」と言われて、こちらもちょっぴりむっとして、それじゃあ、と1本増やさないで減らしたことがあった。
 最近は応対が柔らかくなったと思っていたけれど、やっぱり変わっていない。
 頑固おばさんの面目躍如といった感じで可笑しかった。

11日(火)雨。気温も少し下がって、何となく肌寒い。
 ヤスコさんが整骨院でやった治療が障って、ずっと腰痛だという。今日は久しぶりに行く、と言うので、紹介した責任上早目に行って院長先生の予約を取り付けてあげる。
 私だってあちこち痛いけど、もう気にしないことにして、行きあたりばったり。
 1週間ほど前からデビューした若い浪速オトコの先生に、昨日胃のつぼを押してもらってよくなったわ、と言ったら「やったね」だって。
 若者ってこれだから好き。まったく屈託がない。
 帰りに寄って下さったヤスコさんと話し足りなかったので、デイホームに連れて行って、1時間付き合わせてしまった。
 異空間の初体験!と目を丸くしていたけれど、将来のいいヒントになったかも。
 付き合わせたお返しに、渋谷までバスで一緒に行って、デパートと紀伊国屋を一回りしてまたバスでトンボ返り。
 お昼に少し濃厚なパスタを作ったので、今夜は神戸屋ベーカリーのサンドイッチで軽くすませて、おわり。

12日(水)94回目のユトリーバ。今日は欠席が多く、6人のお客様だからテーブルを動かさないで済んだ。
 いつもキッチン係のアツコさんがお休みと電話が入って、当てが外れた。
 ほんとうはお汁粉を作ると言っていたのになあ。
 そこで大急ぎで、冷蔵庫のものを集めて具沢山の味噌汁を作った。これはこれでおいしい。
 約半数が欠席だったけれど、人数が少ないと、話題がひとつに纏まるのでこれも捨てがたい一日だった。 今の世の中は腑に落ちないことばかり、そういう話題になると、皆力が入る。
 特にいま熱くなるのが、参院選の候補者のおはなし。
 林立するタレント候補が当選したら、「許せない」、と皆口角泡をとばす。
 今日はアルトが居ないので、コーラスは止めにして、録画しておいたNHKハイビジョンの「THE STAR 綾戸智絵」を2時間見た。
 時々パターンを変えるのもいいものだと思う。介護でマイナス思考に嵌っているA子さんに檄を飛ばしたつもりだけど、少しは刺戟になったかな。

13日(木)ほんとうに不思議なことだけれど、私の町では狭い歩道の中を自転車がベルを鳴らして飛ばして走り、はみ出した歩行者は車道を体を斜めにして歩いている。
 それなのに、目の前の交番のお巡りさんは、見ていて何も言わない。
 今朝は閉まりそうな踏切めがけて飛ばしてきた車が、危うく人に接触しそうになって、人ごとながらドキッ。
 ほんとにこの世の中、体に悪いことが山のようにある。私は長生きしたいので、難しいことは考えないことにした。
 だから今日もしたい放題…私の場合、したい放題というのは、何もしないで、でれでれしていること。
 この間から、録画しておいた「キューポラある町」の映画をすこしずつ見ていたのだけれど、今日の午後、後少しのところまで見て一時停止のボタンを押し間違え、停止にしてしまった。
 もう一回最初から見る羽目に。
 それにしても、少女時代の吉永小百合さん、かっわい〜い。

14日(金)今日は前からわくわくしながら待っていた、シホコさんのお宅に伺う日。
 彼女のお宅は、東京の南に位置するわが家から、ひたすら1時間北に向かった調布市にある。
 最初は、都心を経由してごみごみとした空気を吸いながら電車で行ったけれど、なんとも魅力的な多摩川沿いに上っていく経路を発見してからは、この時期にお訪ねするのが、とても待ち遠しい。
 二子玉川まで電車に10分乗って、そこからは、成城学園行き、更に乗り換えて神代団地行きのバスに揺られていく。
 成城学園の高級住宅地を外れると、あとは野川沿いにうらうらと漂う緑の空気を思い切り吸い込んで15分のドライブ気分。
 たった1時間のこの小さな旅が、私の少々くたびれた細胞を蘇らせてくれる。
 今日の目的は、この間買った3冊の絵本にネパール語の注釈を付けていただくため。
 この先ネパールに行くことが難しくなった今、彼女のご厚意に甘えて(…というか強引に)、本を子どもたちに届けていただくことだけが、ケントスクールと私の接点なのだ。
 野川沿いの彼女の部屋からは、ヒマラヤほどの大きな空が広がっている(わが家に比べたら、のはなしだけど)。
 居心地のよい3時間余りを、時を忘れて心づくしのサンドイッチ、すぐそばの川で採ったヨモギで作ったというクッキーなどを美味しく頂いて、至福の時を過ごし、帰り道、二子玉川からもさらにバスに乗りついで、東横線の多摩川まで、水辺の風景を堪能した。
 ここからはさらにわが家のすぐ近くを走るバスがあるけれど、流石に乗りくたびれて、そこからは電車で5分。今日はいい日だったなあ。

15日(土)新聞の占い欄(これ結構楽しみ)を見たら、今日私は疲れがたまりやすいから十分に休養すべし、と書いてある。
 しめた!と思ったのは、今日は全く予定がないのだ。
 朝めいっぱい寝坊をして、ぐでぐでと家の中を移動、思いついたように庭の雑草を毟ったりして、午後はテレビにパンパンに内臓してある録画の中から、2本の映画を見る。
 このところ少々消化器系に疲れを感じるので、流石のくいしん坊も少し食を控えることを心がけることにしている。
 只さえ運動不足なのだから、このままで食べ続けたら、折角痩せたのもあっという間に元の黙阿弥になることは時間の問題。

16日(日)美容院の奥さんとの話で「今日来る途中で、パトカーと消防車と救急車が停まっていて、人だかりがしていたの、なんだか人が暴れていたみたい」「木の芽どきだからおかしくなる人がいるのかもね」といいながら、ほんとうに木の芽どきだわ、と思った。
 美容院に出かけるまでの少しの時間に庭にでたら、あちこちに新芽が出ていて、一寸の間にしっかりと丈を伸ばして、庭の片隅に安住の地を得ている雑草も多い。
 そんな中でこの前まで絢爛たる出番を全うしていた花たちはさりげなく次にその場を譲って、春は幕を下ろし、梅雨のインターメッツォを控えながら、初夏の緞帳をあげつついる。
 思いもかけない片隅に芽をだした山椒は、どこに植え替えてあげようかしら、あらあら、去年根こそぎ取ったノウゼンカズラがこんなところまで地下茎を延ばしていたのね、このたおやかな三寸アヤメは、切り花にしたら何日もつのかしら、と花との対話は楽しい。
 でもなによりも小躍りしたくなったのは、ここ数年の間に、東横線の線路周辺に増えてきたオレンジのちいさなポピーがついにわが家の庭の片隅にデビューしたことだった。
 今日はもう買い物に出るのは止めにして、と思ったけれど、美容院の帰りに本屋さんに寄って文庫本を2冊買った。
 そうそう、今夜はお嫁ちゃんのヒロミさんが夜ごはんをご馳走してくれるって言ってたっけ、と思いだしてアンカフェ寄ってケーキを5つ買った。
 アンカフェでパテシエの腕をあげているSさんの「コイバナ」を聞くのが楽しみ。
 しっかり者の彼女は、余り優しいオトコは嫌、追いかけたいの、と朗らかにのたまう。
 適当なところで手を打ったら?とさりげなく感想を述べて帰ってきた。
 今日は「親知らず」が痛くてテンションが低いの、と言ったけれど、ケーキはいつも通りに美味しかった。
 そして今夜は、なによりヒロミさんの、この間母の日の食事会に風邪で欠席した代わり、という気持ちが嬉しくて……。

                    
                        
17日(月)ちょっとした事が心にちいさな刺をさして、落ち込みそうな気分になることがある。
今日はそんな日。でも、この間くよくよと考えたことが、私を危うく鬱の谷間に落ちそうな崖っぷちに追い込んで、動悸が激しくなったことを考えて、くわばらくわばらと気持ちを立て直す。
 こんなとき旦那が居たら、なんて言ってくれたかしら。
 でもいくら問いかけても返事をせず、にこにこと笑っているので、今日はもうユトリーバの歌を歌ってあげなかった。
 供えてあったお菓子も取り上げて食べちゃう。
 今日は熊本では30℃になったと、テレビが報じていた。家の中もむ〜っとして、寒さが去ったと思ったら、もう梅雨がスタンバイしているという。うかうかしていられないわ。
 気分一新したくて、庭に水を撒いた。気持ちがいい。

18日(火)録画しておいた北欧フィヨルドの船旅を開いて見ていて、そういえば旦那が病の床に就くようになってから、「フィヨルドとアイスランドの旅はしたかったな」、と言っていたのを思い出した。いつか行きましょうね、と言っていながら、そして、その間気に入っていた国へは何度も行ったのに、なぜかその機会が訪れないうちに、両方とも行くチャンスを得ないままに別れが先に来てしまった。
 テレビが良くなって、お陰で臨場感に溢れた風景が見られるので、すっかり行った気になっていても、ああ、やっぱりここには2人で行きたかった、としみじみと思った。
 今頃になってなんだか沈殿したマイナス分子が湧きだしてきて、自分で自分を扱いかねている。
 デイホームに行ったら、「あら、どうしたの?目が引っ込んでいる」、と言われた。
 夕方になってヤスコさんが通りがかりにと、立ち寄ってくださり、お友達と話している間は、とても晴れ晴れと楽しい。

19日(水)昨夜早くに寝たら12時半に起きてしまい、どうにも眠れず、3時過ぎまで本を読んで起きていたので、今日はなんだか朦朧としている。
 ほんとうならプールに行く予定だったけれど、止めて整骨院に行く。
 ほんというと、最近入った若い先生にやってもらうと、どうも余分なところが痛くなるので、気が進まないのだけれど。
 帰ってきてポストを覗いたら、旅行会社のパンフが入っていた。
 何気なく開いて、あるページに目をとめた。昨日テレビで見たノルウエーのフィヨルドのコースがあるのだ。
 神様のお引き合わせじゃないかしら。今日は一日そのことを考えて過ごしてしまった。
 よく読んだらコースは船旅ではなくて、どうやら世界一と昨日知った鉄道の旅に、フィヨルドに入る船がついているらしい。
 でも、私にはお誂え向きのおひとり様限定の旅で、もう催行決定の8人に達しているらしい。
 テレビでみた、限りなく静寂な中に生気が満ち溢れた山と、鏡のように研ぎ澄まされた水の世界に分け入って行きたい。
 アイスランドは今の状況ではとても実現は無理だけれど、もし、火山の怒りが静まれば、ノルウエーに行くことは可能だろう。
 しばらく考えて結論を出そうと思う。そう思ったらなんだか楽しくなってきた。

20日(木)何たるポカ!プールのロッカールームで水着に着かえて、さて、と思ったら帽子を忘れてきたことに気がついた。
 無帽ではプールにははいれない。スタッフが居たら売店に走ってもらおうかと思ったけれど、今日に限って誰もいない。
 ばっかみたい、と我ながら情けなくなったけれど、あっさりと諦めてお風呂にゆっくりと入って帰って来た。
 今日は雨。細かい雨が音もなく、小止みなく落ちてきて一日が暮れた。
 昨日発見した北欧の旅のパンフを見直したら、キャンセル待ちとある。
 なんだかとっても残念なような、ほっとしたような複雑な気持ち。
 零点に立って、どっちにころんでもいいように、気持ちを作りなおす。
 デイホームから、夏祭り(毎年恒例だけれど、私はボランティアは失礼することにしている)にユトリーバで歌いに来てほしいとのこと。月曜日なので、メンバーが揃うかどうか自信がない、と取り敢えずのお返事をしておく。
本心はすこし[めんどっちい]。夜になってメンバーに電話連絡をしたら、心やさしい皆様は気持ちよく承諾してくださった。
 当日のお昼はサンドウィッチとスープをご馳走することにしよう。せめてものお礼の気持ち。
 夜10時になって玄関の開く音。だれかな?と思ったら、息子が小さな鉢植えを2個持ってきた。
 取り敢えずリビングのテーブルに飾ったけれど、下に敷く受け皿のちょうど良いのがない。
 思いついて、私がお嫁に来た時からこの家にあったガラスの茶色い小さなお皿を見つけて使うことにした。
 姑が大事にしていたもので、私の趣味に合わないけれど、捨てかねて食器棚の奥に突っ込んであったものがやっと出番を迎えた。
 私ってわる〜い嫁だけれど、自然の流れで仕方ないことだったな。

21日(金)今日は30℃まで急激に上昇した。
 物事には手順というものがあろうに、この世の自然も人為もすべて順番が狂ってしまった感じ。
 とにかくまず最初に考えたのが、今日は何を着たらいいのか、ということ。
 辛うじてくっついているというほどの、短い半袖のブラウスを着て出たら、周りはなんと、上着を着ている人ばかり。
 日本人ってこういうところがとっても几帳面というか、いっそ融通が利かないと言うべきだろう。
 プールに行ったら、エイコさんがせっせと水の中をウオーキング中だった。ゆっくりなエイコさんに合わせるべく、20分遅れて上がり、帰りに館内の、夜はバーになるという軽食の店に行ってしばらくぶりに1時間ほどお喋り。
 美味しいカレーとミモザサラダのミニセットを食べていて、ふっと、あれ、今夜はカレーを食べようと思っていたんだっけ、と気がついたけれど、後の祭り。
 でもよく考えたら、夕べ3個作ったかき揚げ天ぷらが1個残っていたんだっけ。
 ことほど左様にちゃらんぽらんな生活ぶり。
 でもこのかき揚げは我ながら上等の出来だったんだ。一週間に3丁来るお豆腐が、小ぶりとはいえ5つも溜まってしまい本来あまりお豆腐が好きでない私は、かなり苦労して消化している。
 だから毎晩のようにお豆腐の味噌汁を食べる羽目になって、これは少しばかりつらい。
 うちの村民はみんな、何か上げると言うと、かならず「要らない、ある」と断ってくるのだ。
 そして決まっていうのが、「お母さんは買いすぎだ!」……「へいへい、そんなことわかってらい、だけど、お使いに行きたくない日だってあるんだもんね」。
  明日も暑いらしい。

22日(土)今日から一念発起して、6時に目覚まし時計を掛けることにした。夕べもなんだか寝つきが悪かったけれど、そういうことは無視、無視。
 何故かというと来週木曜日にバス旅行の予約をしてあって、出発が横浜駅8時半なのだ。
 旅行会社の人が、上野7時半です、と言ったけれど、横浜なら1時間遅い。そこで横浜に行くことにしたのだ。でも、時間に間に合う自信が全くない。
 お金は払い込んでしまってあるから、なんとしても遅れるわけにはいかないのだ。
 なんだか今からわくわくしていて、我ながら小学校の遠足みたいと、おかしい。
 久しぶりに洗濯をして、午前中せっせと働いたら、眠くなって朝から1時間の昼寝。
 午後になって、退屈で息がつまりそうになったので、そうだ、渋谷に行こうと、思いついた。
 何があるわけでもないけれど、雑踏の中にもぐりこみたい心境だった。
 自由が丘の町から乗ったのでは座れないので、ひとつ前のバス停から乗り込んだ。
 駒沢公園近辺が渋滞していると思ったら、競技場でサッカーをやっているらしい。
 帰りには試合が終わったのとぶつかって、大変な人波が果てしなく続いていた。バスも超満員。
 今日はマリクレール祭りで、恒例の障害者の施設のクッキーを少し買って帰った。

23日(日)午前中大脇病院で地区のインボディ測定があるので出掛ける。今日は朝から雨なので、空いているかと思ったらなんと始まって30分にして53番目だった。
 測定では、あらかじめわかっていた通り、体脂肪が増えていた。
 足の筋力が落ちているのは、膝が痛い今当然のこと。気に入らないのは、ウエストとヒップ差という項目。
 データの説明をしてくださったのは、旦那が入院中にお世話になったヤマウラ先生で、久しぶりにお会いして当時のお礼を言えることが出来たのが嬉しかった。
 何かあったら僕がお世話しますからね、と先生も嬉しそうだったけれど、まだ生々しい記憶が強くて、まかり間違ってもこの病院に入院なんかしたくない。
 でも、その節はどうぞよろしく、と帰って来た。
 駅前の音楽祭が始まっていたので、ちょっと立ち止まったけれど、ブラスバンドを1曲聴いて踵を返す。
 雨なので、もうどこにも出掛けず、ずっとテレビを見て過ごした。
 だから足も弱るし、体脂肪も増えるし……。
                            
                         
24日(月)朝のテレビで秋葉原に歩行者天国を復活させるかどうかについて、アンケートをとっていた。
 その結果については、私にとってどうでもいいことだけれど、とっても気になったのが、取材されている人たちの申し合わせたように語尾を引っ張る話し方だった。
 だから〜〜、……でえ〜〜、だけど〜〜、といずれも語尾に強いアクセントがついていて、とても聞き苦しい。
 若い人ならまだ許しもするが(ホントは許せない)、いい大人が使っているのでちょっとびっくり。
 余談になるけれど、朝ドラの主題歌の歌い方も、余りきれいでない。曲が悪いとは思わないので、やっぱり発声法の問題なのだ。
 夜になってつけっぱなしで見ていなかったテレビの画面から、とても美しいイントネーションの英語が聞こえてきた。
 思わず振り返ったら、アメリカの女性政治家のコメントだった。大統領のブレーンと言うくらいの人なので、そんなに女性らしい弱々しい容貌ではないけれど、次々に流れ出る言葉が、よどみないリズムに柔らかさを伴って、なんとも音楽的だった。
 話し方はその国の文化を象徴すると私は思っているので、ここいらで暴走し始めた日本語のあり方を皆様考えません?といいたい。
 勿論言葉というものは生き物だから、その変遷について変わることにいちゃもんをつけようとは思わないけれど、せめてニホンゴの美しさを失いたくない、と思ってしまった。
 今夜は嬉しいことに、娘が夜の食事に、ツバメグリルのハンバーグを買ってきて、ご馳走してくれた。
 おいしかった。

25日(火)なんとなく危うげな、それでいて律儀な、と言った感じで、お陽さまが、時々雲に邪魔されながら居座っている。
 さてと、今日は一日中自由な日(一年中自由だけれど…)。
 どうしようかな、と思いながら、取り敢えず水着を着こむ。
 この間から、寝室のカーテンが1ヶ所ほころびているのを気にしていたけれど、2重サッシが邪魔をして取り外し困難。
 数日前無理して腕を上げたら、そのあと痛くなったので、とても気になっているけれど放置している。
こういう日はえいや、とことを起こすのが私の流儀。だから、9時を待って郵便局に行き、同窓会の会費を払い込んでそのまま電車に乗ってプールに行った。
 今日は水中歩行のコースがリズムが悪くて、とても歩きにくい。
 例によって2組のおばはんが、のたのたと歩きながら団子状態でお喋りに余念がなく、それをかいくぐって追い越すおじん、途中から突然Uターンする人と、ごちゃごちゃしていた。それでもマイペースを守って1時間歩き続けた。
 1分間に50歩で60分なので、3000歩稼いだことになる。
 夜になって不思議なことに立て続けに懐かしい人から電話が入った。
 名古屋のミチコさん、千葉県柏のアヤちゃん、鎌倉のカズコさん……。
 だから私は今夜とっても機嫌がいい。

26日(水)朝のうちからりと晴れていたけれど、予報通り午後遅くなって雨となる。
 都合が悪い時に限って、天気予報が当たるらしい。
 整骨院のソバジマ先生(あだ名のソバジというのが気に入っている)が、前回と今回のインボディーのデータを見比べて、筋肉が増えていると、嬉しいご報告。
 コンクリートの上を歩くと足が痛くなるけれど、プールで3`歩いているのも無駄ではなかったのが分かって、「ヤッタネ」と心で拍手。
 さてさて、明日は心待ちにしているバス旅行なので、今夜の雨が上がってくれるのを、ひたすら祈っている。
 今日はテレビの番組もそう面白いのがなく、明日に備えて(遅刻しないように)早寝をすることとする。

27日
(木)6時に起きて、段々にエンジンをアップさせる。どうにか雨が上がって、またとない旅行日和の朝。
 8時20分に横浜駅西口の天理ビルの前に着いたら、もうお目当てのバスは来ていた。
 お隣の席は85歳の見るからに才女。今日一日のパートナーだ。
 早速自己紹介、走り出したバスの中は、これが今日初対面の人とは思えない賑やかさだった。
 今日のツアーは、「おひとり様限定参加」の清水港寿司クルーズ、島田の薔薇園、お茶の博物館での新茶詰め放題と魅力的だ。
 可愛い3階建の船で潮風を受けてのお寿司1.5人前は最高だったし、なにより新茶詰め放題というのが楽しかった。
 年齢層の幅はかなり広く、結構若い人も居て、こんなにたくさんの人が一人旅を好んで居ることにちょっとびっくりした。
 私にとって一人旅ツアーは、ネパールに行ったとき以外の初体験。
 なによりお隣の85歳のお相手の話が面白く、いつもだったら必ず途中で寝るのに、最後まで話が弾んで、これからこういう一人参加のツアーを利用するつもりの私としては幸先が良い。
 帰りに横浜で降りたのは往きに乗り込んだ6人と、意気投合して途中下車した埼玉、千葉からの3人だけ。
 あとは終着の上野まで、ということで、皆様にお礼を言って下車した。
 それにしても埼玉、千葉組は、横浜で降りちゃって帰りは大変だったろうな。
 そうそう、今日のハプニング、海老名のサービスエリアで、空のペットボトルを捨てようと思ってゴミ箱に向かっている途中で、不意に声をかけられた。
 誰かと思えば、目の前に懐かしいワタナベご夫妻の顔が、にこにこと笑っていらっしゃる。
温泉のお帰りとか。なんだかとても嬉しかった。再開を約してお別れする。神様っていたずらが好きねえ。
 雨の横浜駅に降り立って、コンコースで崎陽軒のしゅうまい弁当を買って帰る。

28日(金)朝6時、からりと晴れている。テレビをつけたら富士山がとても綺麗と報じていた。
昨日は帰り道の由比の絶景ポイントで、ほんのちょっぴり頭を出しただけだったのに、といささか恨めしい。
一晩寝て思い返したときに、改めて昨日の一期一会の素晴らしさを思った。一日中バスの中に居る限り話の弾んだお隣の方とは、お互いに住所もフルネームも知らないまま。それでよかったのだと思う。
 この一人参加のツアーは病みつきになりそう。
 午後から夜にかけては、ずっと針仕事を楽しんだ。
 これは、ずっと前マチコさんから借りたままになっている手ぬぐいを使って作るバッグを、やっと思い立って試行錯誤の上で作りだしたもの。
 ミシンを引っ張り出すのが面倒で、夜までかかってちくちくと手縫い。
 これもまた楽しからずや、と言ったところだけれど、流石に手仕事は時間がかかって、夜まででやっと半分の出来。

29日(土)お日様はまたご機嫌斜め。そうこうしているうちに梅雨に入ってしまうのだろうな。
今朝はちょっぴり憂鬱だった。何故かというと、夕べ泥棒がはいったかと思うほどに、散らかしたまま寝てしまったのだ。
それでも、雪かきのブルドーザーみたいに、テーブルの片端に寄せて、朝食を済ませてからは、また昨日の続きの針仕事で午前中が終わってしまった。
 午後はコーラスに行く。この指導者はどうやら声楽家で、とてもいいバリトンだけれど、テンポが悪い。
 これは自分が自分の音楽に入り込んでしまう余りの、要するに歌いすぎ。
 だからピアノの伴奏を頼りに歌うので、各パートが指揮者とわずかなタイムラグがあるように思われる。
 9月の本番まであと10回しかないのに、大丈夫かしら?とちょっぴり心配になる。
 帰ってからまた針仕事の続きをやっていたら、息子がケーキを下げてやってきた。
 作っているバッグを見て、欲しそうな顔をしたので、つい、「これ要る?」と聞いてしまったら、来週のイタリア出張にジロロモーニさんへお土産に持っていきたいという。
 そうなると張り切る私は、つくづくあほ。

30日(日)朝2階でだらだらしていて、8時半になりいくらなんでもと、下へ雨戸を開けに降りたら、リビングがむ〜っとして、匂いが籠っている。
 慌てて窓を全開して空気を入れ替えたけれど、実は昨日の汚れものを流しに放りっぱなしにしていたのだ。
原因は一昨日から入れ込んでいるバッグ作り。やり出したら面白くて、やるべき雑事をすべてさぼっている始末。
 だから深く、ふかく、ふか〜く反省して、今日は朝からごみ処理に励んだ。
 テレビのゴミ屋敷を見て、どういうきっかけでこうなるのかと不思議だったけれど、ことは簡単。ちょっとしたはずみと理由で、皆様そういう世界にはいりこんでしまったのだろうな、と、すこしばかり気持ちがわかるような気がした。私だって……、おっとくわばら、くわばら。
今日は季節がちょっぴり逆戻りした感じで、寒い。










                  HOME